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第7章 椛を続けていくということ

わたしの物語

大学4年の就職活動のとき、自分が何をやりたいかも分からず、大手企業や安定収入しか見ていなかった私は、とりあえず片っ端から知っている企業に応募していました。

今思えば、似合わないスーツを着て、ヒールを履いて、都内を歩き回り、家に帰れば面接結果を待って携帯電話が手放せない日々。

目指したいもの、やりたい事なんてなかったのに、何であんな必死に頑張っていたんだろうと、今になって思います。

就職活動のとき、会社訪問で先輩社員の話を聞いた時、ある先輩の言葉が今でも記憶に残っています。

「好きな事と仕事は別にした方が良い。好きじゃなくなるから。」

その時は、好きな事もなかったし、その意味を深く考えることもありませんでした。

でも、好きだった料理を仕事にするようになって、その言葉の意味が少しだけ分かるようになりました。

第7章 椛を続けていくということ

私は料理をすること、そして自分の料理を目の前で食べてもらって喜んでもらうことが好きです。
それは、お金をいただかなかったとしても、続けていきたいことです。

でも、仕事として料理を続けていると、家で料理をしたくなくなる日もありました。

いくら好きでも、毎日続ければ息抜きは必要になる。

だから、好きな事を仕事にするなら、好きなままでいられる距離感も大切なのだと気付きました。

趣味はお金がかかるもの。
仕事は効率を求めるもの。

料理を仕事にした時、そこに限界があることも知りました。

私にとって料理とは何なのだろうか。

そんな疑問を持ち始めたのは、料理を生業として生活するようになった頃からでした。

 


先日、美容室を始めることをお伝えしてから、お客様からたくさんのお言葉をいただきました。

「椛の料理が好きで、なくなってしまうのが寂しいです。」

そして、昨年料理教室を辞めたときも、生徒さんから同じような言葉をいただきました。

「毎月楽しみにしていたので、とても残念です。」
「また再開する日を楽しみにしています。」

その言葉を聞いたとき、
嬉しさと同時に、胸がぎゅっと締め付けられるような気持ちになりました。

私が大切にしてきたものは、ちゃんと誰かの中に残っていたのだと感じたからです。

料理教室「PetitAmourE」

cuisine cafe 椛

どちらも、私にとって大切な場所です。

でも、両立しようとした時期、どちらも失いかけたことがありました。

美容室を始めたら、また同じことを繰り返すのではないか。
全部を中途半端にしてしまうのではないか。

そう思ったとき、私は気付きました。

私がやりたかったのは、
料理教室でも、飲食店経営でもなく、

料理と空間を通して、
誰かがほっと安らぎ、帰る頃には心が満たされる、
そんな体験を届けることだったのだと。

そしてそれは、“飲食店・カフェ”という形でなくても出来ることだと気付きました。

その新しい形が、“サロン”という在り方です。

美容室をやりながら、

これからは、飲食店・カフェとしての営業ではなく、
サロンという形で椛を続けていきます。

そしてこれからは、一人ではなく、美容師である夫と二人で、その空間を作っていきます。

美容は、外側からその人を整えていくもの。
そして食は、内側からその人を整えていくもの。

外側と内側、その両方から整うことで、その人本来の美しさが、自然と現れていくのだと思います。

少人数で料理と空間を体験していただきながら、レシピや盛り付けをお伝えする場所。

「cuisine salon 椛」

好きな事を仕事にすることは正解でも不正解でもない。

それが答えなのではなく、
好きな事を、好きなまま続けていける形を見つけること。

それが、今の私の答えです。

椛は、形を変えながら、これからも続いていきます。

美希

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