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第3章 料理教室の幸せと、カフェで見失いかけた“私らしさ”

わたしの物語

第3章 料理教室の幸せと、カフェで見失いかけた“私らしさ”

料理教室の日々は、私にとって本当に幸せな時間でした。
生徒さんが楽しそうにテーブルに座り、
出来上がった料理を喜んでくれる──
その瞬間に私の心は満たされ、
“この仕事が好きだな”と素直に思えていました。

そして、生徒さんが生徒さんを紹介してくれて、毎月生徒数は増え、気付けば私の始めた小さな料理教室に、100人以上の方が来てくれていました。

毎月欠かさず通ってくれる方も増えて、

いつの間にか、私の大切な仕事になっていました。

けれど、人生の流れはゆっくりと別の方向へ動いていきました。

ちょうどその頃、私は離婚をし、
新しい生活のために引っ越しをしました。

暮らしを続けていくための現実も、

同時に考えなければいけない時期でした。

好きなことを続けるためには、

仕事として向き合う選択も必要で、

私はそのバランスを必死に探していました。

この頃の私は、

「やりたい気持ち」と

「生活を守る責任」の間で、

静かに揺れていたのだと思います。

そして、引っ越しをしたマンションの1階には、
かつて別の方が運営されていたカフェがあり、
ご縁があってその場所を引き継がないかと声をかけていただいたのです。

「あなたのセンスを入れて、このお店を変えてほしい。やってみませんか?」
そう言ってもらえた時、
新しい人生を始めるタイミングと重なって、
希望の光が差したような気がしました。

──自分らしさを活かして働けるかもしれない。

そう思い、私は料理教室を続けながら、カフェをお預かりすることに決めました。

最初は「自分らしい空間を作ろう」と意気込んでいました。

料理教室で大切にしてきた

空間の整え方や、器の選び方、

お客さんとの距離感。

「こうしたら、もっと心地よくなるかもしれない」

そんな気持ちで一つひとつ手を入れていったのですが、

そのたびに

「それは少し違う」

と言われることが増えていきました。

もともと、その場所には

長く大切にされてきた空気があり、

それを守ろうとする人たちがいました。

だからこそ、

私の感覚が受け入れられなかったのだと思います。

理解しようとすればするほど、

合わせようとすればするほど、

自分の中にあるものを

そっと奥へしまい込むようになっていきました。

 

 

また、以前から働いていたスタッフとの関係も、

少しずつ難しくなっていきました。

仕事の進め方や、考え方の違い。

どちらが正しいということではなく、

ただ、目指している方向が違っていた。

それをうまく言葉にできないまま、

私は「馴染めていない自分」を

責めるようになっていました。

自分のセンスを出したい気持ちと、

この場所に合わせようとする気持ち。

その間で揺れながら、

私は少しずつ

「ここでは、私は私でいられないのかもしれない」

そう感じるようになっていったのです。

“私らしさを入れたい。でも入れられない。”

気がつけば、
“そのお店としての私”はいるのに、
“美希としての私”が、だんだん薄くなっていくような感覚がありました。

そんな中、カフェを始めて3ヶ月ほどで、
世の中はコロナの影響を強く受け、
緊急事態宣言でお店を閉めなければならなくなりました。

扉を閉めても、家賃や光熱費の支払いは続きます。
売上はゼロの日が続き、
通帳の残高はみるみるうちに減っていきました。

“このままでは続けられない。”

そう思いながらも、
「続けてほしい」という周りの期待を背負い、
人生で初めて銀行から融資を受ける決断をしました。

…正直、本当につらかった。

でも、背負ってしまった以上、やるしかない。

人生で初めて銀行から借入を受け、

必死に、ただ必死に続けました。

でも──
自分らしさを出せない場所を、
借金をしてまで続けるという現実は、
想像していた以上に心に負担がかかりました。

ある時、私は思い切って、
「自分の店をやりたい」と気持ちを伝えました。

すると、その場所を新しい形にして良いと言っていただき、
私は少しずつ、自分の手で空間を作り直し、
“私の世界”と言えるカフェへと育てていきました。

こうして生まれたのが、
今の私のお店「椛(もみじ)」です。

自分の選択で、
自分の責任で、
自分の店を持つということ。

あの頃の葛藤や涙は、
私が“自分らしさを大切に生きる”ための、大きな学びでした。

🌿 **第4章 予告

― カフェ「椛」が生まれるまで ―**

料理教室を続けながら、
私は思いがけない形でカフェに関わることになりました。

それは、
「あなたのセンスを入れてやってみない?」
という一言から始まった挑戦でした。

けれど実際に飛び込んでみると、
理想と現実の間で悩むことも多く、
“自分らしさとは何だろう”
と立ち止まる時間が増えていきました。

思うようにいかない日々。
不安と責任の重さ。
そして、コロナという予想もしなかった出来事。

それでも私は、
逃げずに向き合うことを選びました。

この章では、
なぜ私が「自分の店を持ちたい」と強く思うようになったのか、
そしてどんな想いで
カフェ「椛」を形にしていったのかを綴ります。

自分の世界を、自分の手で取り戻していくまでの物語です。

私についての紹介はこちら👉https://cuisine-momiji.com/history/

Instagram▶️https://www.instagram.com/momiji.awaji/

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